2021年にもなって、久々にFPSとしてApex Legendsをプレイしている。ヘタクソなのはそうなのだが、恐らくこの半年間でPS4 Pro/PC版あわせて700~800時間はプレイしているはずだ。久々にFPSをプレイしているので、ゲーミングディスプレイを試して、比較してみることにした。
ゲーミングディスプレイに対する謳い文句への懐疑感
これまで LG 27UD55-BK と LG 27UL850-W (どちらも 27インチ4K液晶)をデュアルディスプレイにしていて、このうち、 2020 年に購入した 27UL850-W をゲームプレイに使用していた。このディスプレイはどちらかと言えば発色などがキレイなことがウリだ。
もちろんリフレッシュレート60Hzの液晶ディスプレイが十分だとは思っていなかった。もともと私は初めてのFPSといえば液晶ディスプレイが普及する前である1990年代の初代DOOMだし、また2000年前後は三菱のダイアモンドトロン管ディスプレイ RD17V で、100Hz 程度のリフレッシュレートでFPSを遊んでいた経験があるので、液晶ディスプレイかつ60Hzが大きな制約であることは理解していた。敢えていえば液晶になる前なら100Hz程度は当たり前だった。また最近のトレンド Oculus Rift などのヘッドセットを見ていても、60Hz では不足だが 90Hz もあれば脳を騙せることが知られているので、60Hzで足りなくても、100Hzぐらいの頻度で更新されれば十分だろうと思っている。
しかし、周りのプレイヤーからは「60Hzよりも高リフレッシュレートのほうがよい」だけで終わらず、「敵レジェンドが止まって見える」「ディスプレイを変えるだけでキル数が増える」などという主張をされるし、販促ビデオでは相手より素早く反応できると謳われている。果たして、そこまでの効果があるのだろうかと、懐疑的に思っていた。
買おうと決意したものの、欲しいものの在庫がない
とはいえ、そろそろゲームに適したモニタが欲しくなってきた。コロナ禍でほとんど外出することもなく、スノーボードは2シーズン連続でスルーしており、月々の大きな支出としては家賃とメシ代(自炊するようになったため2年前の1/4〜3/1ぐらい)ぐらいなのだ。この半年で FPS を500時間以上プレイしているのだから、多少投資してもいいのではないだろうかと。
実は 11 月頃にゲーミングディスプレイの購入を決意したが思ったようなモデルがなく、2月に ASUS が発表した XG27UQ (4K 144Hz)をバックオーダーしている状態である。手元の古いLG 27UB55(27インチ 4K)で何十秒も残像が出る不具合が出ているので、買い換えるなら、同じ利用感で仕事にも使えるゲーミングディスプレイを、と思い、このモデルにたどり付いた。
しかし、昨今の自動車をはじめとする部品不足問題のためか中々納期が確定せず、少なくとも3月中にも手に入らないことがほぼ確定的になった。この機種に限らず、ある程度スペックや型番にこだわりを持って液晶ディスプレイを購入しようすれば、流通量の少なさにすぐ気づくだろう。正直なところ現時点で表示されている納品時期が守られるのかも判らない。
とりあえず、繋ぎのつもりで買ってみた
今回は MSI Optix G241 を購入してみた。スペックを妥協して市中在庫から選べば3万円でお釣りがくる価格感だ。半年近く「ゲーミングディスプレイの在庫がネェ……」と考える日々が続いていたことを考えたら、さっさと買ってしまったほうが精神的に良かったのではないかとさえ思える。
中途半端なものを買いたくなかった最大の理由は、設置場所の都合だ。27インチ×2+MacBook Proでギリギリだったが、やむを得ず、なんとか3枚目のディスプレイを追加した。ディスプレイアームに載せてあるので利用シーンによってある程度片付けたり引っ張り出したりはできる状態にある。
とりあえずの印象
早速 Optix G241 を Windows PC に繋げてみると、マウスカーソルの動きがかなり滑らかになった(というか見える残像が増えた)のはすぐわかり、印象的だった。ウインドウのドラッグなども全体的に滑らかになっているのもわかる。
Forza Horizon 4 を動かしてみると 60Hz と 144Hz では高速道路を高速巡航しているときに横を流れていく鉄柱の滑らかさが印象的だった。
過去に多少試したことがある Aim Lab を改めて試してみると、これまで 30,000 点ちょっとの印象だったテストで 50,000 点台が出てきて驚いた。ただ、ディスプレイの変更だけでなく自分のプレイスキルの向上もあると思うので、そこは考慮しないといけない(特に最近は Apex Legends の仕様アップデートに伴いウイングマンでの練習をはじめている)。
ゲーミングディスプレイによるメリットはこの時点である程度体感できていたが、もう少し定量的に比較してみることにした。
比較環境のセットアップ
今回は GPU (Radeon RX 6800 XT)から、これまで使っていた 27UL850-W (60Hz 4K 5ms) と今回の Optix G241 (144Hz FullHD 1ms) を DisplayPort で同時接続し、 Windows の機能で両方のモニタに映像をミラーする。なお、 Windows の機能で画面をミラーした場合に遅延が増加するかどうかは判っていなくて、この部分を定量的に測定する方法を持っていないので、この観点については無視する。
フレッシュレートは各ディスプレイの最大値が適用されているので、従来のディスプレイでは 60Hz 、ゲーミングディスプレイでは 144Hz で表示される状況となる。これで、どちらを見るかだけで利用できるディスプレイをスイッチできる環境ができた。
定量的に比較できるように、引き続き Aim Lab を使って、プレイ中のディスプレイの表示状況をデジタルカメラのビデオ撮影機能で 60FPS 撮影し比較することにした。ディスプレイの前に三脚を立てて、富士フィルムのX-T3カメラで両方のディスプレイを撮影できるようにした。ひとつのカメラのセンサで両方のディスプレイの出力映像を記録することで、1コマ単位で見比べて比較できる。
もちろん、本来 60Hz と 144Hz の違いを検証するのなら 60FPS では不十分だ。少なくとも 144Hz の倍の 288Hz(FPS) 前後のフレームレートで撮影したほうがいいだろうが、私はそこまでの機材は持っていないから、手持ちの機材でできる範囲での検証とする。
写真左側が LG 27UL850 、右側が MSI Optix G241だ。
なお、正面からの撮影ではないとはいえ、この写真で見ればわかるとおり、発色については Optix G241 に対して 27UL850 のほうが圧倒的にキレイだ。手元で試している限り、 27UL850 と比較できる環境で見れば、 Optix G241 は全体的に色褪せて見える(色温度などの設定でカバーできる範囲ではない)。これらは両方とも IPS パネルだ。
応答速度を比べてみる
とりあえず動画撮影をしながら、両方のモニタで Aim Lab を比較してみたところ、今回購入した G241 のほうがボヤケが明らかに少ないことがわかった。このため目が疲れにくい印象を受けた。これは動画からフレームを切り出してみても判る。
この写真では下にあったターゲットをエイムしてから上にあるターゲットに移ろうとしているが、その際に27UL850ではひとつ前のフレームが残像として映っている。実物では、この残像がボヤけに見えている。Optix G241では、この残像感がとても抑えられている。60Hz 5msのスペックを謳うディスプレイの残像は、デジタルカメラを用いて60フレーム/秒で撮影したレベルでも十分に記録できるほどだった。
表示遅延を比べてみる
録画を確認するとOptix G241のほうが常に若干新しいフレームが描画されていると感じられる。実際には144Hzのリフレッシュレートで更新されていることもあり、操作に対してダイレクトにフィードバックがかかるので、エイム操作がしやすくなる感覚はあった。
動画の各フレームを確認していくと、以下のフレームが見つかった。28UL850では過去のフレームに対して新しいフレームが表示されようとしており、Optix G241ではより新しいフレームが表示されている。
どちらのディスプレイでも、いちばん右のターゲットにはこれから表示される武器の陰がかぶっているが、このかぶり方が非常に似ているのは面白いポイントだと思う。144Hzのほうが明らかにより新しいフレームが表示されている。しかし、60Hzモニタは更新頻度が低いとはいえ、特別に遅延が大きいわけではないようだ。
遅延がどれぐらいあるかはカウントダウンの瞬間などを比較するとわかりやすい。5,4,3...とカウントダウンがなされる時の60Hzディスプレイでの描画の遅れは、表示開始までの遅延は1フレーム(16.6ms)前後、表示が安定するまで2フレーム(32.2ms)未満だった。
1/144秒毎に更新されているディスプレイとの比較として考えると、1/60秒毎にしか更新されておらず、画面の残像感が1フレーム分残る液晶パネルであることを考慮すれば、妥当な挙動だ。32.2msはデジタルカメラの撮影機能が60FPSであることから想定した最悪値だ。実際の遅延はこれより少ないだろう。
ゲーミングディスプレイの宣伝文句は本当か?
ゲーミングディスプレイの宣伝文句として「フレームレートが高いほど、相手がより早く見える」といった表現がされていたり、それをイメージさせるデモ映像がある。
今回の比較を見る限り、あの宣伝文句はかなり大げさな表現だが、一般的な 60Hz ディスプレイと比べれば確かに10~20ミリ秒ほど早く画面上に敵が映り込んだり、より新しい位置に敵が見えたりするのは事実だろう。
とはいえ、10ミリ秒を切ってくると現在のインターネットにおけるピア間の遅延のほうが大きくなりうるし、それをごまかすための補間や予測などもされているわけなので、まあ、そうね、というレベル感で捉えている。
実際のゲームだとどうなる?
同じように Apex Legends でダミー撃ちする映像をフレーム単位で見てみたが、複雑なApex Legendsの画面は144Hzを60FPSで録画しても、複数フレームが同時に映りこんで逆に破綻した画像になってしまった。体感と異なり144Hzの画像のほうが見づらく、紹介に紹介するような内容にならなかったので、ここでは省略する。
感覚的には、マウス操作による視線移動が発生した場合にダミーや周りの景色がはっきり見えることにより、プレイしやすくなると感じた。
ゲーミングディスプレイはゲーミングディスプレイだった
今回、はじめて60Hzを越えるリフレッシュレートに対応した液晶ディスプレイを買ってみたが、ゲーム画面が見やすくなるなどのメリットが確認できた。特に、 FPS のように視点移動によって画面の表示が大きく変化するようなゲームでは、残像感が大幅に減少するため、疲れにくくなりそうだ。
まだ「ゲーミングディスプレイにするだけでキル数が伸びる」かどうかはわかっていないが、ぼちぼち実践で試してみようと思う。